宇宙利用のいま
  • 2024.11.01 Fri

宇宙ホテルのチェックインは温かいチョコチップクッキーとともに?ヒルトン、宇宙旅行のホスピタリティ実現に挑戦

この記事をシェアする

ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ系列の「ダブルツリー・バイ・ヒルトン」では、チェックイン時に温かいチョコチップクッキーをいただけることで有名です。2019年12月、同社は宇宙旅行時代を見据えた新たな挑戦として、国際宇宙ステーション(ISS)でクッキーを焼く実験を行いました。この実験は微小重力環境での食品調理方法を探るものでした。近い将来、ヒルトンが提携する宇宙ホテルでは、チェックイン時に地上と同じホスピタリティで、地上と同じ温かいクッキーをいただけるかもしれません。

目次
世界のホテルチェーン、ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ

ヒルトン・ホテルズ&リゾーツは、コンラッド・ヒルトンによって1919年に創業された世界的なホテルチェーンです。高級感と快適さを提供するヒルトンのブランドは、ビジネス客から観光客まで幅広い層に支持されており、そのホスピタリティは世界中の人々に愛されています。

「ダブルツリー・バイ・ヒルトン」でチェックイン時に提供されるチョコチップクッキー ©2024 Hilton
ダブルツリー・バイ・ヒルトンの有名なチョコチップクッキー

ヒルトンの傘下にある「ダブルツリー・バイ・ヒルトン」では、チェックイン時に温かいチョコチップクッキーをいただけることで有名です。国内にも富山、京都、大阪、沖縄にあり、ご存じの方も多いのではないでしょうか。1986年に始まったこのサービスは、宿泊客に「自宅にいるような温かさ」を感じてもらいたいという「おもてなし」であり、多くの宿泊客にとって、ダブルツリーのチョコチップクッキーは特別な思い出の一部となっています。そんなクッキーが最近宇宙へ行っていたこと、ご存じでしょうか?

ヒルトン、宇宙でチョコチップクッキーを焼く実験に挑戦!

ヒルトン創業100周年を迎えた2019年、同社は宇宙旅行時代を見据えた新たな挑戦として、国際宇宙ステーション(ISS)でチョコチップクッキーを焼く実験を行いました。このプロジェクトは、ヒルトンと米国の宇宙企業ナノラックス(Nanoracks)、スタートアップ企業ゼロ・ジー・キッチン(Zero G Kitchen)の3社により実現したものであり、微小重力環境での食品調理方法を探るものでした。
実験では、5枚のクッキー生地と宇宙用オーブン「ゼロGオーブン」の試作品が国際宇宙ステーションへ届けられ、宇宙飛行士がオーブンの焼き時間と温度を変えながら、クッキーの焼き上がり具合を調べました。

宇宙用オーブン「ゼロGオーブン」と国際宇宙ステーションへ届けられたクッキー生地(左)。レシピはホテルで提供されているクッキー(右)と同じとのこと。©2024 Hilton
宇宙でチョコチップクッキーを上手に焼くには?

宇宙でクッキーを焼くためには、地球上とは異なる特別な手法が必要です。通常、ホテルのキッチンでは、対流式オーブンを約150℃に設定し16~18分で焼き上げています。しかし、微小重力環境では対流が起きないため、代わりにオーブントースターのように熱伝導を利用した宇宙用オーブン「ゼロGオーブン」の試作品を開発し、ベストな焼き方を検証しました。実験の結果、地上と同じように美味しいクッキーを焼き上げることに成功しましたが、焼き時間や温度調整などにおいて、新たな課題も明らかになりました。

(左)調理はパルミターノ宇宙飛行士とコック宇宙飛行士が担当。焼きあがったチョコチップクッキーとミルクと一緒に。(右)ISS船内に浮かぶクッキー生地 ©NASA

5枚のクッキー生地のうち、最初の1枚は150℃で25分焼きましたが生焼けでした。2番目と3番目のクッキーはそれぞれ75分と60分焼いた後、香ばしい匂いが漂ってきました。4番目のクッキーは120分焼いてオーブンの外で25分冷まし、5番目のクッキーは130分焼いて10分冷ましたところ、これら最後の2枚が最も上手く焼けました。

調理を担当したイタリア人のパルミターノ宇宙飛行士によると「クッキーの香りがして、チョコが溶けているのが分かる」とのこと!宇宙でクッキーを上手く焼くには、より高温で長時間かける必要がありそうです。また、宇宙用オーブン「ゼロGオーブン」は、今回の実験結果をもとに改良される予定です。将来的にはベーキングだけでなく、微小重力環境でのグリル、フライパン調理、鉄板焼きなども可能になるとのこと。
現在の宇宙食は、すぐ食べられる調理済のものが主流ですが、今後宇宙で料理をする楽しみが増え、宇宙での生活がより快適になる日も近いかもしれません。

「ゼロGオーブン」はこんな方にオススメ
●調理と重力の関係を探りたい研究者の方
●微小重力環境での食品調理方法を研究したい方
●将来の宇宙食をテーマに学生や一般の方々と関わりたい教育関係の方
●自社製品の進展をアピールしたい食品関連会社の方
●自社の技術力をアピールしたい家電メーカーの方
●宇宙クッキングという新たな領域を開拓したいすべての方!

今年5月から米国バージニア州の国立航空宇宙博物館で実物公開中!2026年にはスミソニアン博物館へ移設予定

ヒルトンのチョコチップクッキーは宇宙で焼かれた最初のクッキーとなり、2020年に冷凍した状態で地球へ帰ってきました。そして、今年5月から米国バージニア州シャンティリーにある国立航空宇宙博物館のスティーブン・F・ウドバー・ヘイジー・センターで展示されています。なお、2026年にはスミソニアン国立航空宇宙博物館に移され展示される予定です。展示品は、カビが生えないよう窒素ガスを封入したクリアケースに収納されています。そのため残念ながら、甘いクッキーの匂いをかぐことはできませんが、ぜひ実物を見て宇宙での食品調理の未来に思いを馳せてみてください😊

宇宙で焼いたチョコチップクッキー(左)は2026年からスミソニアン国立航空宇宙博物館(右)で展示予定 ©2024 Hilton
ヒルトンプロデュースの宇宙ホテルでも食べられるかも?

ヒルトンは、宇宙ホテルの開発にも積極的に取り組んでいます。2022年、ヒルトンは米国の商業宇宙ステーション・スターラボ(Starlab)のオフィシャルパートナーとなり、インテリアデザインや宇宙飛行士の寝室の設計と開発を担当すると発表しました。スターラボ(Starlab)は、2028年以降に地球低軌道に打ち上げられ、運用を開始する予定です。
将来的には、ヒルトンプロデュースの宇宙ホテルでダブルツリーのチョコチップクッキーをいただける日が来るかもしれません。宇宙旅行が現実のものとなりつつある今、ヒルトンの挑戦は、多くの人が宇宙へ行ける未来が決して夢ではないと感じさせてくれます。

★おまけ★特製チョコチップクッキーを食べたくなった方へ

ここまで読んで「ぜひ食べてみたい!」という方へ公式レシピ(英語)をご紹介します。作り方の動画も掲載されていますので参考にしてください。

🍪ダブルツリー・バイ・ヒルトンのチョコチップクッキーの作り方(英語ページ)

ダブルツリーのクッキーは温かいうちにいただくのがポイント!焼き上がりは外側がカリッと、中がしっとりとした食感が特徴です。世界中の人々に愛され、宇宙にも行った特製クッキーの味をぜひご賞味ください。

●Source:(英語サイト)
- Hilton Stories(Hilton Stories: DoubleTree Chocolate Chip Cookie First Food Ever Baked in Space
- CollectSpace: DoubleTree Cookies Space Results
- Hilton Stories: Hilton Voyager Space Partnership
- For the First Time, DoubleTree by Hilton Reveals Official Chocolate Chip Cookie Recipe so Bakers Can Create the Warm, Welcoming Treat at Home

この記事をシェアする

next