ARISS(アリス)は、世界中の学生が国際宇宙ステーションの宇宙飛行士と無線交信できる教育プログラム。英語で宇宙飛行士に質問をしながら、宇宙や科学技術への理解を深める学びは、忘れられない貴重な体験となるでしょう。
小学生、中学生、そして高校生の皆さんへ!今年の探求テーマは「国際宇宙ステーション(ISS)にいる宇宙飛行士との無線交信」に挑戦してみませんか?地上400km上空にある国際宇宙ステーションには、もう20年以上に渡り、宇宙飛行士が交代しながら滞在しています。その宇宙飛行士本人と、10分間の音声通信ができる教育プログラムが「ARISS(アリス)」です。世界中の学生が参加でき、日本でもこれまでに100以上の学校や団体が参加しています。2022年に埼玉県から参加したボーイスカウト狭山第二団の子ども達からは「チェルさん(宇宙飛行士)と繋がったとき、本当に感動しました。宇宙が身近に感じられる体験でした。」「無線や宇宙のことについて教えてもらい、無線をやってみたくなりました。」といった声が寄せられました。
ARISS(アリス)とは、Amateur Radio on the International Space Station(国際宇宙ステーションのアマチュア無線)の略称です。子どもたちがアマチュア無線を使って、国際宇宙ステーション(ISS)にいる宇宙飛行士と交信し、英語で宇宙に関するさまざまな質問をすることができます。ARISS(アリス)に参加することで、英語でのコミュニケーション能力や科学的思考力が鍛えられ、宇宙に対する興味が高まることでしょう。何より、宇宙にいる宇宙飛行士と直接話をするなんて、一生の思い出になるに違いありません。
ARISS(アリス)を運営しているのは、世界の宇宙機関(米国のNASA、日本のJAXA、ロシアのロスコスモス、欧州のESA、カナダのCSA)と各国のアマチュア無線団体、そして教育関係者です。交信相手の宇宙飛行士を含め、関係者の多くはボランティア活動として日々の運営を支えています。ARISS(アリス)は、宇宙教育を推進する国際的な連携により支えられ、今年で40周年を迎えます。
ARISS(アリス)で使うアマチュア無線は、その名の通り個人の趣味として楽しまれている無線通信の1つです。無線通信といえば、今やスマートフォンやWi-Fiなど日常に溢れていますが、アマチュア無線はその原点といえます。かつて1970-1980年代の日本では「King of Hobby(趣味の王様)」と呼ばれるほど流行り、現在も根強い人気があります。また、アマチュア無線は災害時の非常通信手段としても有名です。東日本大震災や能登半島地震では、携帯電話など公衆通信回線が寸断された被災地で、貴重な連絡手段となりました。
ARISS(アリス)に参加する際は、宇宙飛行士との交信だけでなく、ぜひそれを実現しているアマチュア無線の仕組みについても調べてみましょう。現代社会になくてはならない通信の基本を体験的に理解できるチャンスです!
ARISSに参加するためにはまず、学校もしくは教育団体からARISSへ申込書を提出します。申し込み方法は本記事の後半をご覧ください。なお、個人での申込みはできませんので、学校の先生の協力が必要です。また、アマチュア無線通信を確立するためには、通信地点にアンテナ等の無線通信設備を準備し、無線従事者の資格と、無線局の免許を取得する必要があります。これらの準備は学校だけでは難しく、近隣にアマチュア無線の免許を持った方がいれば、協力を仰げると良いでしょう。
宇宙飛行士との交信に向けた事前準備としては、宇宙飛行士の生活や宇宙実験について調べてプレゼンテーションを行い、ARISSに参加するメンバーでシェアすることをおススメします。その後、質問を考え、実際に無線交信を行うことで学びがより深まります。また、英語でスムーズに質問できるよう、外国語の授業で先生の協力を仰ぐのも良いでしょう。宇宙飛行士役をたてて練習すれば、より本番に近い環境になり、練習にも力が入りそうですね。
日本では2021年に6回、2022年に4回実施されています。2022年7月に参加した京都府の宇治市立北小倉小学校は、創立50周年を祝うイベントとして実施しました。参加した児童20名は、事前に質問を考え、英語の練習や当日のシミュレーションを行い本番に備えました。また、アマチュア無線技術は「関西ARISSプロジェクトチーム」がサポートし、学校と地域の協力体制により実現しています。本番では、国際宇宙ステーション(ISS)が日本の上空を通過するタイミングで、アマチュア無線技術者が交信を確立しました。そして20名の児童がISSにいるチェル宇宙飛行士と交信し、一人ずつ宇宙飛行士に質問することができました。
『交信が終わった時、児童はもちろん、そこに居合わせた全ての人達が笑顔になりました。パブリック・ビューイング会場の体育館からも拍手が聞こえ、改めて会場に拍手が広がったのが印象的でした。Kjellさんは、質問に答える際に、20人全ての名前を呼んでくれました。また、コントロールオペレータとの会話の中で、学校の創立50周年に対する「おめでとう」の言葉をくれました。この体験は、参加した20人だけでなく、北小倉小学校にとって大きな思い出・大きな宝物となりました。』
※引用元:「京都府宇治市の北小倉小学校で国際宇宙ステーションと交信に成功」
子ども達の質問は多岐にわたり、宇宙での生活、食事、運動、そしてISSで行われる実験について尋ねました。例えば、「宇宙ではどのようにして食事を摂るのですか?」という質問に対して、宇宙飛行士は宇宙食の種類や食べ方について詳しく説明してくれました。また、「無重力状態での生活はどのように感じますか?」という質問には、無重力の影響やその対応策について答えてくれました。
ARISS(アリス)を通じて、子どもたちは宇宙や科学技術への興味、英語でのコミュニケーション能力を向上させただけでなく、このイベントを成功させるために、全員で協力して準備を進めるチームワークの重要性を学びました。参加した児童はもちろん、学校関係者や保護者、地域の人たちにとっても忘れられない貴重な体験となりました。
※当日の様子はこちら
ARISSに参加するには、まず学校もしくは団体から申込書(英語)を提出します。詳しい申し込み方法はARISS Japan公式サイトの「4. スクールコンタクトの申込み方法」をご覧ください。なお、ARISSは毎週実施していますが、世界中の学校から多くの申し込みがあるため実際に実施するまでには数か月~1年程度かかる場合があります。
宇宙飛行士との無線交信は、一生に一度の素晴らしい体験です。ぜひ、あなたの学校や地域団体でARISSに参加し、最先端の宇宙や科学技術への興味を深めましょう。皆さんの学校から、次の宇宙飛行士を目指す子どもたちが生まれるかもしれませんね!
Source:
ARISS公式サイト
ARISSスクールコンタクト
ISSとアマチュア無線で交信できますか
有人宇宙飛行におけるアマチュア無線の運用
Amateur Radio on the International Space Station (ARISS)
烏山宇宙プロジェクトARISSスクールコンタクト
京都府宇治市の北小倉小学校で国際宇宙ステーションと交信に成功