バイオ3Dプリンター BFF（ビーエフエフ）は、宇宙空間の微小重力環境下で人体組織を製造できる米国初のシステムです。ヒトや動物の生きた細胞（多能性細胞や幹細胞など）を使い、超微細なバイオインクの層を精密に配置・構築する技術により、宇宙で組織を製造することができます。

地球上では骨の3D印刷に成功していますが、血管や筋肉などの柔らかい人体組織の製造は、より困難であることが分かっています。地球上では、身体の本来の環境に近い、柔らかく流れやすいバイオ材料で印刷しようとすると、組織が自重で崩壊してしまい、水たまりのようなものができてしまいます。しかし、同じ材料を宇宙空間の微小重力環境で使うと、3D印刷した柔らかい組織は、その形状を維持することができます。

また、宇宙で印刷した組織は、適切な処理を行わないまま、すぐに地球に持ち帰ると崩れてしまうことが分かっています。それを防ぐため、BFFは、細胞培養システムによって、時間をかけて組織を強化し、地球の重力下に戻っても維持できるよう、宇宙で運用されています。なお、組織印刷の工程は1日以内ですが、強化の工程は、組織によって12～45日かかります。

宇宙でBFFが長期的に人体組織を製造できるようになると、以下のような医療のブレイクスルーに繋がる可能性があります：

・ 臓器提供者不足の解消に貢献できる。（移植待機者は日本国内だけでも１千万人以上います）
・ 患者に合わせた代替組織やパッチを作製できる。
・ 移植を受ける患者は、自分自身の幹細胞で構成された臓器を使うことで、拒絶反応の可能性が低くなり、抗拒絶反応薬や追加移植に伴う、長期的な医療費を削減できる可能性がある。
・ 心臓や臓器の移植を受けるためには「まず誰かが亡くならなければならない」という条件をなくすことができる。
・ 印刷された人体組織を使い、薬効試験を行うことができる。

BFFは、NASAが示すTechnology Readiness Levelの最高レベル９(※)を獲得しています。2019年、BFFは宇宙で初めて、ヒトの心臓の細胞を使った印刷に成功しました。また、ヒトの半月板の一部をテスト印刷し、製造することにも成功しています。

(※)レベル9とは、ミッションの成功により「フライト実証」された実際のシステムであることを意味します。

BFFのサービスを提供する米国企業 レッドワイヤー社（Redwire, 略称NYSE RDW）は、フロリダ州の都市、ジャクソンビルに本社を置く企業です。米国の他、ヨーロッパを含め10拠点で事業を展開し、総従業員数は約800名。宇宙が経済圏となる時代に向けて、重要課題を宇宙で解決するアプローチの提案と、信頼性の高い宇宙用装置開発の実績がある、世界的な宇宙企業です。国際宇宙ステーションで採用された新型の太陽光発電、宇宙空間での3D印刷と製造、アビオニクス、基幹コンポーネント、センサー、デジタルエンジニアリング、宇宙におけるバイオテクノロジーの分野に置いて、貴重な知的財産を有しています。同社は、「Heritage plus Innovation（伝統＋イノベーション）」という企業戦略のもと、数十年にわたる宇宙実験の実績と、機敏で革新的な文化を併せもつ企業です。宇宙が経済圏となる時代に向けて、ブロックのように、宇宙実証済みの性能と、新しい機能を組み合わせ、宇宙インフラを確立するサービスを展開しています。

企業担当者より日本の皆さんへご挨拶！
「レッドワイヤー社は、日本を含めたアジア地域を、最も重要な市場の一つと位置づけています。弊社は、日本の大学、政府機関、民間企業の皆さんと連携し、宇宙研究・製造プロジェクトができる日を心待ちにしています！」

Source:（英語サイト）
https://redwirespace.com/products/bff/
https://www.issnationallab.org/ng18-bff-printer-redwire/
https://www.issnationallab.org/techshot-biofabrication-facility-prints-meniscus/