手のひらサイズのScienceShell（サイエンスシェル）は、国際宇宙ステーション(ISS)で細胞培養ができる実験装置です。世界の研究者が、技術的にも価格的にも宇宙実験に手軽に挑戦できるよう、完全自動化マイクロラボとして開発されました。

ScineceShellは、実験容器(Outer Shells)と専用の実験インサート(Inner Shells)で構成されます。利用者は、宇宙実験用モデルと地上試験用モデルを使って、宇宙実験と地上対照実験を行うことができます。

ScienceShellには７つの装置タイプがあり、さまざまな細胞培養実験に対応できます。中でも、特にTYPE-IV（タイプ４）はISSに何度も飛行実績があり、がん細胞、免疫細胞、幹細胞などの細胞培養実験に利用されています。

● ScienceShellの７つの装置タイプと用途
①Mini Aquarium（小型の水槽）…微小重力下での水生生物の実験用
②TYPE-IV及び③TYPE-V…微小重力下での活性細胞培養用
④Greenhouse for Growth of Higher Plants…シダなど維管束をもつ植物の栽培用温室
⑤4-Chamber、⑥8-Chamber及び⑦2x2-Chamber,…微小重力下で使用できるペトリ皿

ScienceShellが提供する実験環境は、前述したように微小重力環境です。加えて、将来的に地球、火星、月それぞれの重力環境をシミュレート*できるようになります。
*現在開発中の宇宙用培養装置ScienceTaxi（サイエンスタクシー）との併用を前提とします。ScienceTaxiは計38機のScienceShellを格納し自動操作できる装置です。ScienceTaxi内部にある遠心分離機により、38機中16機のScienceShellは地球、火星、月それぞれの重力環境をシミュレートすることができます。ScienceTaxiは2024年頃に初号機を打上げ予定です。

宇宙実験を行う前に地上で模擬実験を行い、慎重にサンプル選びをしたい場合は、追加オプションとして、地上で微小重力環境を模擬できる装置[Random Positioning Machine (RPM, アールピーエム)やClinostat(クリノスタット)を使用することができます。RPMはNASAやESAを含む世界60以上の研究グループによって評価されている、実績のある装置です。Clinostatは使いやすさが特徴で、週7日×24時間にわたる模擬実験も可能です。

この中から、利用者のニーズに合った装置を選ぶことで、よりシンプルに、より速く（宇宙実験の価格帯としては）より手頃な価格で宇宙実験を実現できるでしょう。

ScienceSellのサービスを提供するユーリ社（YURI）は、ドイツに本社を置く宇宙バイオテクノロジー企業です。これまで、NASA、ESA、ドイツ航空宇宙センター（DLR）などの20以上の実験（ペイロード）を国際宇宙ステーション(ISS)で実施した実績があります。30名以上の宇宙エンジニアと生物学者のチームが、世界中の研究者を支えています。

2023年9月現在、ユーリ社は以下の実績を有しています。
● 151のラボを立ち上げ
● 世界中で58の顧客をサポート
● 138本の宇宙生物学論文を発表

ユーリ社の事業の主な目的は、宇宙バイオテクノロジーにより、地上の生活をより良いものにすることです。同社は、あらゆる人にISSの微小重力環境下での研究・ものづくりサービスを提供します。微小重力環境へのアクセスをより簡単に、より速く、より手頃な価格にすることで、新しい産業の開拓を目指しています。

企業担当者より日本の皆さんへご挨拶！
「"Let’s go reach to for the stars. （意訳：志を高くもとう、困難に挑戦しよう）"私たちと一緒に、宇宙実験に挑戦しませんか？」

Sources：（英語サイト）
About YURI
Hardware and Servicre of YURI
RPM & CLINOSTAT